決めた


さっきからずーっと呼吸が出来ない。
この「caret」という人間の所有者は言ってみれば俺だ。
俺の肉体は俺という者の幸福のために動くべきだし、俺はそう信じている。
なのにこの体ときたら俺の命令には従わないし、変なものにアレルギー反応を起こす。
今俺は自分のことが好きか?と問われたら俺はこう答えるだろう。「No」と。


決めた。今日は最低限しか呼吸を「しない」ことにする。


たまには懲罰をくわえてやらないとならない。
鼻が下らぬ下等植物の撒き散らす花粉なんかに惑わされて酸素の吸入口を封鎖したんだ。しかもそれに対する対抗策すら使おうとしないし考えようとすらしない!本当に役立たずだ!第一、花粉に対する対抗策を立てようとしているのはこの体の中で脳だけなのか?今日は腹が立ったんで、甜茶サプリメントを4錠くらい飲んだが・・・。なんで花粉に対しての間違った認識を改めるとか、デバッグをするとか、ソフトウェアの不具合を修正するとか、そういうことをしようとしないんだ?本当に使えない。それともアレか?そういうことを担当するのは脳だっていうのか?なんで俺だけに働かさせるんだよ!ふざけんな!


決めた。鼻の細胞には今後酸素を回すことを禁止。必要最低限の量の酸素のみを供給せよ。しかし果たしてその命令を肺が聞いてくれるのだろうか?心臓が聞いてくれるのだろうか?血液はどうか?俺は一生懸命念じてみた。しかし命令を聞かない。なんなんだよこの体は!最低だ!最悪だ!ある組織が上の者の命令に従い柔軟に動くことを、比喩として手足のように動く、とよく言うが、人間の体は実は手足のように動かないのではないか?よく訓練された組織の方が絶対に人体よりもよく動くはずだ!花粉症に苦しむ組織なんか見たことあるか?組織の抱える問題を改善する努力すらせずに5年以上も放置するような組織があるか?ねぇよ!ふざけんな!


第一鼻なんだよ!鼻に、自分が体の中でどれだけ重要な役割を担っているかっていう自覚が足りない!花粉なんかで一気に陥落しやがって!いいか!テメェの機能が使えなくなったらどれだけ大変なのか分からないのかよ!まず呼吸ができなくなる。いや、できなくなるのではなくて、しにくくなる、ってとこかな。大抵の人間は鼻呼吸に馴れているため、大抵はフルオートで呼吸をすることができる。だが口で呼吸をするしかないために、手動での呼吸を余儀なくされる。それが何を意味するかっていうと、口での呼吸のために眠れなくなるってことを言うんだよ!そして鼻が詰まっていると喋るときの声なんかがおかしくなり、人間としての尊厳はなくなる!人間にとって「な」行と「ま」行と「ら」行が発音できないと言うのは大変間抜けだ。それがどういうことか分かってんのかぁっ!人間としての尊厳はがた落ちである。そして鼻から変な液体が出て仕事が手につかなくなる!ティッシュを家に忘れただけで大変なことになる!しかしそういうときに限って駅でティッシュ配ってるヤツはティッシュを俺にくれない!本当に殴ってやろうかと思ったことが何回もある。あと、以外と辛いのが味覚が無くなるってこと。これだけある。鼻一つ陥落すると大変なことになるんだよ。でもそれが未だに分かってない!こんな要所がほったらかしなのである。しかも対策を立てない。もしこれが人間の組織だったら、俺は鼻を処刑するね。絶対に。


俺の体は敵だらけだ。